有限会社オバラ建商【北海道帯広市・自然と健康と環境にこだわった建築資材販売会社】
アスベスト問題考3

7月以降、真面目にこの問題と向き合い、自らの過去の経過も含め贖罪的部分と一抹の不安を抱きながらも現実に直面できた事は近年無かった。ちょうどひと月に一遍の割合で雑文を書くことになりそうです。

とうとう身近な人に「中皮腫」の患者が発生し、現在、抗がん剤投与と放射線治療を受けるため入院中です。地縁・血縁の強い狭い地域性もあり、どこかで繋がっている為か、本当に身近な問題になりました。6月に告知され、7月には左片肺全摘出手術です、「手術痕をみるかい」といわれ拝見してしまいした。まだ50歳の現役ばりばりで、伺った、翌日が50歳の誕生日、「明日誕生日ですよ」って言ったら笑っていました・・・。

職人は最後まで現役が夢のはず、だれももこんな形で夢の挫折を望んではいない。


1.何ゆえ、地雷化なのか

「地雷による被害者は、現在一年で15000人から20000人が死傷していて、(対人地雷)は世界70ヶ国に、一億一千個以上が埋設されている。地雷は一旦埋められると、長期(50〜100年)にわたり、無害化されないため、住民への危険が残る。製造は容易で安価・・。」

この文章の主語を、アスベストに置き換えても十分ストリーは成り立つ。そして、被害を受けるのは、経済的・肉体的弱者である。まさに都市における「地雷」そのものである。

そして、常に新しい毒には解毒剤が用意されるように、地雷にもまた新しい除去車両がうみだされる(川崎重工のブルドッグ等)ように、アスベストに関しても、除去作業を請け負う職種がここぞとばかりに営業活動を活発化しはじめ、各行政機関は調査、予算付けを急いでいるのが現状である。自らの失態を末端の自治体へ押し付けているのに他ならないし、事の本質を、公共性を声高に叫び処理することで隠蔽しようとしている。


2.次々とあかるみにでる含有製品・・・

7月22日付けで「大建」が生産されていないと書いたが、何の事は無い、社内調査が間に合わなかっただけのようで、8月30日付けのHP上で、一挙に公表している。が、その前の段階では何時か知らないが、然るべき監督官庁には連絡済のようである。このように消費者への対応は、常に二番手・三番手で、決して目は消費者へは向いてはいない。まして、情報を聞かれない限り流そうとしていない。この辺のことは、この業界の持つ流通経路に中間業者の介在が幾重にも存在しているが故の問題点でもあるし、常に情報の発信源が供給側に主導権が握られている現実がある。さらに、これも見落としていたのだが、経産省が調査依頼した製造企業81社のなかに、吉野石膏があり急きょHPを開くと、「過去のごく一部の製造にアスベストが使用されていたものがありました。昭和45年〜昭和61年まで製造された石膏ボード全生産量の1パーセント弱であります」と、@〜F・※で表記してある。この15年間の住宅の着工数、そこで使用された量を考えると簡単にはいそうですかと納得するわけにはいかないだろう。まして、※印の15ミリ石膏ボードガラス繊維入りは通常の住宅では使用せず、工事物件で使用されるものである。含有比も4.5パーセントと他項目の3倍から4.5倍である。この15年は住宅もさることながら、大型物件が全国いたるところで建った時期ともいえる、又、左官モルタル混和材への石綿使用も明らかとなっている(この辺の事を、地元業界者に聞くと10数年前、○○○まで取りに行き、手作業で息を止め袋詰めをしたと言う)従ってそこで加工・切断に従事した職人は、外装・内装作業時の両方で被爆していると考える。(非常に重要なポイント)

さらに、日本内装協会・TOTO等、建設業界に身をおく人にはなじみのメーカーが、HP上で何らかのかたちで公表しているので、参考にされたい。留意点は、何れのメーカーもあえて情報を流通経路には流そうとはしていないということである。現場に一番近い販売店には、問い合わせが無い限り公表しないようだ。従って第一線の営業マンは事の重大さを対岸の火事のごとくしか感じていない。自らが販売促進している(していた)にもかかわらず。当然経営者も同じような感覚であろう。


3.マスコミ報道にみる住宅(産業)隠しー事の本質を覆い隠す報道

アスベストが原因の疾患による死亡者数は、2005年7月15日で374人と発表され、その後、7月22日391人、8月22日451人と確実に累計数は増え続けている。

マスコミ報道はあいかわらず、公共施設関係の調査と、摘発に心血を注ぎ、最近の報道では

「学校の給食用の回転釜」や「ブリジストンの幼児用自転車のブレーキパット」まで類が及んでいる。また、9月13日付け新聞は経産省公表として「石綿、521家庭用品で使用」として報道している。報道のニュースソースは明らかに、文化省・環境省・経産省・国交省と分かれているのが現状である。当然扱う新聞社によっても温度差は生まれている。

すでに6月末報道より3ヶ月が経たんとする現在あいかわらず、アスベスト消費の9割を占める建設資材への検証は、あるいは推測はほとんど報道の対象とはなっていない。が、最近少しづつ報道され始めたので、抜粋してみる。

  1. 8月31日付け・「アスベスト破砕 産廃中間処理施設 粉塵増加の恐れ」:「非飛散性(屋根材・壁材)がこれまで使用されたアスベストの量は、吹き付けの2倍以上とされるほど多く、「古い建物の大半で外装材などにつかわれている」

  2. 8月29日付け・「アスベスト入り屋根瓦 全国500万戸使用 メーカー調査 工場や周辺だけでなく、身近な生活の場にも石綿が広がっていた事で、政府や関係業界は抜本的な被害防止策をせまられる。瓦のほか、外装など石綿入りけんざいの過去の生産量について経済産業省は「調査中」としており、住宅関連の全容が明るみに出るには時間がかかりそうだ。・・瓦はセメント製で補強材として最大25パーセントの石綿を混ぜていた。クボタ・松下電工・大建工業・大和スレート」

  3. 9月03日付け・「アスベスト使用した断熱材昨年まで製造 アキレス美唄工場:白石綿や茶石綿を含む断熱パネル、断熱ボード、機械部品など4品目を1970年から昨年まで製造していたと発表」

  4. 9月06日付け・「含有建材を使用禁止に 国交省部会が対策案 建築基準法でアスベストを禁止、住宅内のアスベスト繊維の飛散状況を測定・表示する仕組みを整備・・」

  5. 9月07日付け・「名寄高は床タイルに 近く解体の旧校舎」


以上が、全国紙と地元大手の新聞紙面である。吹き付け材のみがクローズアップされた結果ともいえる。ただ、(2)の屋根材の500万戸の項目は見逃してはならない、すでに前資料1で示したように、70年代後半以降の住宅の着工量、「サイディングブーム」を考慮に入れると、500万戸の数字以上の驚異的数字になるのではないだろうか。経産省は風上のメーカーを頼りに調査をし、国交省は各自治体へ民間の500u以上の建物へ調査依頼するという図式である。民間住宅(建物)の実態は誰がどんな風に調査すればよいと言うのだろう。

更に、(3)のアキレス工場に関しては、詳しく商品名が出ていないし、まだHP上では公表されていないが、製造が昨年まで継続である以上、市場へは本年の初期の段階では流れているであろう。又、(5)の項目の床タイルは、多分Pタイルを指すのであろう。Pタイル本体もさることながら、そこで使用される「接着剤」にも含まれている事を忘れてはならない。

「接着剤」に関しては、HP上のメーカー検索で参照されたい。

住宅に関しては、このように小刻みに報道されるに止まっている。が、調べれば調べるほど不誠実さが目に付くし、関係機関(○○協会等)の対応が無く、本当に呆れてしまう。まさに、「シックハウス」どころか業界をあげての「地雷化ハウス」黙認の誕生である。


4.今後の課題

現在政府は、来年の通常国会に被害者救済のための新法を提出する予定らしい、そのなかで救済財源を、原因企業と国が負担との方向らしい。(9月9日全国紙)ただこの中での対象者が、製造工場従業員の家族や周辺住民、労災を受けずに死亡した遺族としているようだが、さらに拡大し、アスベストが原因となる被災者全てに適応すべきであろう。

今後、建設関連従事者による発症が予測されるし、業界の労働環境の後進性からいっても、最低限の保障は確保しなければと思う。すでに、ひとり親方の労災申請が壁にあたっているとの報道もあるが、アスベスト被災は自己管理の域を完全に越えている以上、然るべき立法化は当然といえる。また、企業の責任も、特に青石綿・茶石綿が使用禁止なった以降も製造販売を続けていた責任は重いものがあろう。明らかに、作為的であり、確信犯とは言えないだろうか。また当然、それを許した監督官庁は尚更である。

現在、労基署が解体業者・建設関係者を対象に「石綿則」の周知を図っているが、今後への対策としては当然の処置といえるが、過去の検証・反省がない状態での履行は業界のためには為らないのではないだろうか。

大量生産・大量消費・大量廃棄型住宅産業のあり方が根本から問われているのが今回の本質であろう。


(文責 オバラ)2005・9・17

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