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アスベスト問題考2・地雷化しているアスベスト
7月に思いつくまま「アスベスト考」を書いて以降、自らの記憶を辿る作業と、各メーカーのHPの検索を通しやはり戸建住宅への浸透が予想以上だと確認にいたった。

資料1は、アスベスト輸入量と住宅着工数を時系列にしたものであり、外装サイディングに限り列記したものである。見ての通り輸入量(消費量)と着工数は相関関係にある。

1969年の輸入量20万トンを境に、青石綿・茶石綿の使用が禁止となる1995年の19万トンまで30年近く20万トン台をキープしている。(この間アスベストの危険性への指摘は別項にあるように、1970年・72年と相当早い時期に指摘され、報告書さえ提出されていた。法的規制は1976年吹き付け石綿禁止まで何ら拘束はなく、この禁止以降も一部含有と言うかたちで継続することになる。)

この輸入数量の消費内訳は、(1995年の(社)日本石綿協会の資料によると)以下のようになっている。これは本当に信じられない、信じたくない内訳である。(資料の数値と若干ことなるが。)いかに建材として消費されているか、一目瞭然である。


石綿輸入統計 188.5(単位千トン)
石綿 178.5
原綿以外のもの 10.0


■内訳
石綿工業製品 (10.0/5.6%) 自動車摩擦材
5.2
2.9%
ジョイントシート
2.5
1.4%
産業用摩擦材
1.8
1.0%
紡繊品
0.2
0.1%
石綿板
0.2
0.1%
その他の石綿製品
0.1
0.1以下

建材製品(165.9/93.0%)

平版スレート
75.1
42.1%
スレート
36.8
20.6%
押出成型セメント板
32.8
18.4%
パルプセメント板
9.3
5.2%
スラグ石膏板
石綿セメントSD板
7.6
4.3%
上記以外の建材製品
4.3
2.4%
その他の不明石綿製品(2.6/1.4%)  

 

これが95年度使用製品分類である。何と建材への使用が90%を超えているではないか。多分この比率が過去の平均的な比率であろう。この項目の中には、岩綿吹き付け項目は見当たらない・・・・。(何故か)

この項目を見る限り、住宅以外のS造・RC造の大型物件に使用される、それも工場規模クラスに適合する内容といえまいか。いずれにせよ、建築物に大量に使用されていることには間違いない。つまり、列島改造論以降の「箱もの」全盛期の招来と符合するのだ。

さて本題の、サイディングであるが資料1に列記してあるように、1975年を境に80年代に

かけ各社がしのぎを削り、従来の左官領域を侵し、建材メーカーの新市場として現在も売上に貢献している製品である。モルタルのようにひび割れもなく、見た目もよく、施工性もよく、工期も短縮出来るとくれば誰もが飛びつく。そんな時代を演出されたのだろうと今更のように思う次第である。当時は現在のように製品の安全データシートを要求されることもなく、売る方も、買う方も成分まで確かめることは皆無だった時代ともいえる。そういう隙間に「地雷」はセットされるのだろう。

ここで注目したいのは、1970年(以下製造開始年を指す)のNZ社、1978年A社・S社、1979年のT社、1986年D社である。いずれも、1995年青石綿・茶石綿使用禁止以降も平然と生産販売を続けていることである。(いわく、白石綿使用につき)

A社S社にいたっては04年まで続いていた。明らかに何らかの意図をもっての作為的行為だ。では、どの職種の方が被爆対象となったのか。


「被爆者は住宅(建造物)建設時に携わった全ての職人と近隣住民?」

まず資材の流れはメーカーの倉庫から始まるが、本稿では現場サイドから一番近いとろから始める。建材屋から資材が現場へ搬送、この段階では、サイディングは梱包されているが、通常の軒天材である防火板・スレート板等(各メーカーにより呼称は異なるが用途は同じ)は荷づくりの段階で擦れて粉塵化する(1)、現場到着後、切断・加工に入る(2)、終了後、後片付け(3)、その後コーキング屋さんが目地を刷毛で処理(付着した粉塵を落とす)(4)後、コーキング充填。ざっとこんな工程である。

(1)は倉庫の作業員であり、配達人があげられ、(2)は大工さん、貼り屋さんが該当(3)は当然施工者か若しくは掃除担当者で、(4)はコーキング職人となる。ここで問題となるのは、(2)の段階で、サイディング発売当初の施工状況であるが(この状況はしばらく続いた)経験談から言えば、間違いなく現在の様に、チップソーに集塵機はなく、まして、防塵マスクなど着用せずに、顔を真っ白にしながら施工していた光景である。従って現場周辺への飛散は至極当然の結果となる。新製品は新しい職種を生む結果となり、大工さんに代わり、サイディング貼りの専門職の台頭を、1980年代を境に見ることとなる。(このことは、断熱材の業種も同じで従来大工さんが行なっていた領域を分業で効率的におこなわれる工程が生まれたのだ。)ここが非常に重大なポイントで、被爆者の拡大を招き、さらに新設建物の周辺が何らかの形で一時期被爆していることである。したがって、施工時に現場に入っていた全ての人が対象となるであろう。周辺住民は一過性だが、職人はそうはいかない、当時そのような認識が無いのだから尚更である。こうなると、明らかに「公害」であり、「公害」が常に場所を変え移動しているともいえる状況が全国津々浦々まで行なわれた事になる。資料1で列記したサイディングメーカーは有力問屋の販売ルートに乗っかり、地域性でメーカーは異なるだろうが、何らかのかたちで○○メーカーのサイディングが使用されているはずである。とりわけ、D社はその販売網からして巨大な営業力のもと、また、後発メーカーということもあり、他競合社へは販売攻勢を執拗に掛けており、市場を席捲したはずである。


「何故公共施設の 岩綿吹き付け だけを問題視するのか」

まず行政として公表するには、手っ取り早く数字の情報が収集しやすく、公共性を優先している結果であり、20年前の「学校パニック」時の不徹底さを払拭したいがためではないか。それと、民間における90%以上の使用状況を公表することは一大パニックを引き起こす可能性を恐れ、また業界団体への直接的影響を考え(石綿に代わる材質の確定)、段階的に小刻みに公表する方向ではないだろうか。HPで確認するかぎり、企業により対応に温度差があり、対応に苦慮している様が伺える。ただ、何処も同じように「現在当社ではアスベストを使用した製品は一切ございません」が決り文句となっている。そのなかで、D社はこと細かくいくつかの項目をならべ、はては「石綿に関する基本知識」なる項目をもうけ説明に及んでいる。こうなると益々その社会的責任度合いの重大性回避のための言い訳にしか見えてこなくなる。このような文章使いが目に付く「・健康面への影響はないと考えます。」この言い方は、あらゆる公害企業がこの間言ってきたフレーズではなかったか。

すでにS50年代物件はリフォームの対象となり解体の憂き目にあっており、当然今回の問題が表面化するまえに、通常の解体・廃棄の方法で処理されてしまっているはずである。明らかに法規制が後手に廻っている事は間違いない。石綿障害予防規則(石綿則)が平成17年7月1日施行となっている。クボタの死亡発表と同時期とは一体どういうことなのか。どのような関係にあるのか大いに疑問が残る。

昨日の報道によると、テナントビルの倉庫の壁に岩綿が吹き付けていたところで、作業していた方が亡くなったようだが、鉄骨造の建物で店舗展開のところは天井あらわしの状態を内装の仕上げとして使用しているはずであり、大型工場施設も同じ状態にあるかと思う。従って、そこで働く従業員のみならず、出入り業者・消費者も住宅同様一過性の被爆者とならざる得ない。多分私もそのような作業に従事していたのでその一人に数えられる。


「さらに驚愕の事実=住宅内部に潜むアスベスト」

クロス仕上げ以前の内装仕上げは、新建材と言われる類のものだったはずで、その中でも、防火規制のある台所等に使用されていた、D社「キッチン番」、NO社「不動」「火の守」、NB社「エクセルボード」、等の内装壁材にも使用されている。また、天井材吸音板としては、「ダイロートン」「ソーラートン」「ロッキー」「彫り天」等いわゆる業界では、工事物件としてなじみのある呼称のものにも含まれ、当然一般住宅にも大量に普及使用されているはずです。また、ユニットバスの壁材にも。この辺の内容はD社HPが詳しいのでどうぞ検索してみてください。今後の、対応・対策に関しては次の機会に詳しく書きます。何れにせよ、過去の事実と向かいあい、現実から逃避することなく社会的解決を早急に開始すべきと考えます。

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